【超短編 25】 終日が終わる日には
終日が終わる日には
ふと目が覚める。
やけに首が痛い。
座ったまま寝ていたからだ。
(やばい、寝過ごした)
電車の中だということに気づき、慌てて外に飛び出る。
ホームに足を降ろすと、妙な違和感を感じた。
時計に目をやる。
(1時55分)
ホームから見ても、町の明かりがほとんど消えている。
というより、駅前にはコンビニすら見えなかった。
煌々と輝く看板には毎日見ている電車に付けられた行き先で見慣れた駅名が書かれている。
駅名はよく知っているが、実際に終点の駅まで来たのは初めてだった。
一しきり呆然とした後、僕はとりあえずタバコに火を付けた。
駅員に早く出るように注意されるかとも思ったが、改札の方から人が出てくる気配はない。
急に疲れが来てベンチにどっしりと腰を下ろした。
真っ黒なホームに白い煙が宙を舞う。
これからのことを考える。
タクシーも通る気配がない駅前に憂鬱になり携帯を手に取ると、充電が切れていることに気がついた。
(…ついてないな)
しょうがないので、2本目のタバコに火をつける。
どこかで気の早い蝉の鳴く声が聞こえる。
煙を追って、上を見上げると、ホームの屋根に空いた穴から空が見えた。
星も出ていない暗くのっぺりとした夜空がこの辺りを覆っている気がして、僕は夜空から目を反らした。
目をそらした先に熊のぬいぐるみが座っていた。
気がつかなかったのか後から座ってきたのか、とにかく彼は姿勢正しくベンチに座っていた。
「君も乗り過ごしたのかい?」
彼は何も答えなかった。
僕は立ち上がり自動販売機でコーヒーを2本買い、1本は口を開けて彼の横に置いた。
コーヒーを一口飲み、3本目のタバコに火をつける。
白い煙が屋根の穴に吸い込まれるように上がっていく。
「ブラックホールみたいだ」
僕がそう呟くと
「ここは、終日禁煙だよ」
と声がした。
やけに首が痛い。
座ったまま寝ていたからだ。
(やばい、寝過ごした)
電車の中だということに気づき、慌てて外に飛び出る。
ホームに足を降ろすと、妙な違和感を感じた。
時計に目をやる。
(1時55分)
ホームから見ても、町の明かりがほとんど消えている。
というより、駅前にはコンビニすら見えなかった。
煌々と輝く看板には毎日見ている電車に付けられた行き先で見慣れた駅名が書かれている。
駅名はよく知っているが、実際に終点の駅まで来たのは初めてだった。
一しきり呆然とした後、僕はとりあえずタバコに火を付けた。
駅員に早く出るように注意されるかとも思ったが、改札の方から人が出てくる気配はない。
急に疲れが来てベンチにどっしりと腰を下ろした。
真っ黒なホームに白い煙が宙を舞う。
これからのことを考える。
タクシーも通る気配がない駅前に憂鬱になり携帯を手に取ると、充電が切れていることに気がついた。
(…ついてないな)
しょうがないので、2本目のタバコに火をつける。
どこかで気の早い蝉の鳴く声が聞こえる。
煙を追って、上を見上げると、ホームの屋根に空いた穴から空が見えた。
星も出ていない暗くのっぺりとした夜空がこの辺りを覆っている気がして、僕は夜空から目を反らした。
目をそらした先に熊のぬいぐるみが座っていた。
気がつかなかったのか後から座ってきたのか、とにかく彼は姿勢正しくベンチに座っていた。
「君も乗り過ごしたのかい?」
彼は何も答えなかった。
僕は立ち上がり自動販売機でコーヒーを2本買い、1本は口を開けて彼の横に置いた。
コーヒーを一口飲み、3本目のタバコに火をつける。
白い煙が屋根の穴に吸い込まれるように上がっていく。
「ブラックホールみたいだ」
僕がそう呟くと
「ここは、終日禁煙だよ」
と声がした。