向日葵
「痛ぇだろ、普通に。」


外に出て、そのまま数十メートル進んだところで、先に口を開いたのは陽平で、あたしに向けて長いため息を吐き出した。


腕はダランとしたままで、足を止めて振り返ると、まるで悪びれてもいないような、そんな顔。



「何でお前があんな場所に居んの?
もしかして、男でも探してた?」


ククッと笑った陽平に、あたしは目を見開いた。


この人は、本当に一体何を言っているのだろうか。


時々、まるで考えてることがわからなくなる。



「それはあたしの台詞じゃない?」


「んだよ、ちょっと息抜きしてるだけじゃん。
毎日毎日白いご飯じゃ飽きる、って言うっしょ?」


「…だから他の女、ってわけ?」


「そういうこと。」


握り締めた自らの拳は怒りに震え、無意識のうちに唇を噛み締めてしまう。


散々人のことを疑って、そして殴って縛り付けて、なのに陽平はヘラヘラとしたまま。



「…誰の、お金でっ…」


「俺、頼んでねぇだろ。
お前が勝手に俺に金くれてただけじゃね?」


「―――ッ!」


本当に、自分の馬鹿さ加減に呆れた瞬間だった。


結局陽平は、あたしのことを便利な道具としてしか考えてなくて、都合のいい女を演じさせられていたと言うことか。



『この女は、俺が拾ったんだ。
だから、何しようと俺の勝手じゃね?』


『お前は俺の道具なんだから、俺とだけヤってりゃ良いんだよ!』


これが、本来の陽平の姿。



「そういうことだし、わかったら離せよ!」


< 109 / 259 >

この作品をシェア

pagetop