向日葵
きっと、智也なりにあたしを笑わせようとしているのだろう、そんな言葉。


力なく口元だけを緩めると、彼もまた、同じようにして肩をすくめる様に、優しさが見える。



「陽平と、今度こそ終わり。」


「そっか。」


彼はそれだけしか言わず、少しの沈黙の後、“龍司さんとは?”と問うてきたのだが、あたしは首を横に振ることしか出来ないまま。


智也は煙草を咥え、白灰色の煙にため息を混じらせた。



「出ようぜ。」


そう言って彼は咥え煙草のままに立ち上がり、連れ出される形であたしも、同じように部屋を出た。


玄関先で一度足を止め、振り返り見るも、クロとの記憶ばかりが顔を出し、ひどく胸の奥が軋んでしまうが。


自業自得なのだからと、そう言い聞かせあたしは、それを振り払った。








「何があったか、聞かないんだね。」


「大体想像つくし。」


「へぇ、さすが。」


智也の車に乗り込み、ケラケラと笑ってみるも、彼が同じように笑ってくれることはなくて、虚しさばかりが募ってしまう。


窓の外に視線を投げると、明かりの少なさが目に付き、まるであたしの心の中を突き進んでいるようだと思わされた。



「好きとか嫌いって、何か難しいんだね。」


「んなこと言ってんの、お前だけだよ。」


「普通は違うの?」


「シンプルなんだよ、もっと。」


やれやれとため息を吐き出し智也は、こめかみを押さえたのだけれど。


あたしにはちっともわからなくて、やっぱり欠陥人間なのだなと、そんなことを再認識させられてしまう。


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