向日葵
第三章-愛憎-

弱さの色

智也の部屋であたしは、テーブルへと突っ伏し、ため息を混じらせること、幾度目か。


あれから二日が過ぎ、毎日不動産屋に足を運んでみるも、保証人だの敷金礼金だのと、総じて頭が痛くなることばかり言われ、引っ越し先は未だ決まらないまま。


住宅情報誌は穴が開くほど眺め、それでもまた、パラパラとそれをめくる。


預金通帳は肌身離さず持ってるし、陽平の部屋に置いてきたものと言えば服ばかりなので、今更それを取りに行こうとも思わないが。


とにかく、何にしてもお金が掛かる。



「あたし、夜の仕事でもしようかなぁ。」


「いや、お前には無理だろ。」


“愛想悪いし”と、そう付け加えた智也に、あたしはブスッと口を尖らせたのだが。


そもそも人と関わるのが苦手な性格は、自分自身が一番よくわかっているため、反論も出来ないのだけれど。



「それよりお前、晩飯食った?」


「…食欲ないし。」


「んなこと言って、昨日もそこで座ったまま寝てたし、そんなんじゃいつか、体壊すぞ?」


いや、ここで寝てたのは、智也とシングルのベッドで一緒になんて寝られないと思ったからなのだが。


だけどもそんなことは言えないまま、“心配しないで良いよ”と、そんな台詞。



「そういやさぁ、龍司さんのことだけど。」


「……え?」


「もしかしたら、仕事辞めるかも、って。
何か今、ちょっとモメてるみたいだぜ?」


「…何で?」


「さぁね、そこまでは。」


“けどさ”と、そう付け加え、智也は煙草を咥えた。


だけども言葉を選ぶようして、長く煙を吐き出す姿に、あたしは思わず眉を寄せてしまうのだが。


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