向日葵
何が面白かったのかもわからなければ、相変わらずコイツは、あたしのことを呼び捨てだし。


憮然としたままのあたしに向け、未だ向かいの彼は、笑いが収まらないといった様子で。




「…てか、何がそんなに面白いの?」


「わかんねぇけど、全部とか?」


「…アンタ、マジで変なヤツだね。」


そうあからさまにため息を向けあたしは、半分ほど飲んだカシオレを流し込む。


あれほどうるさいと感じていた店内の騒喧さえも、いつの間にか慣れてしまったようで、今は何も感じないんだから、嫌になる。



「つか俺、仕事とかで差別したりしないし。
それに、汗水垂らして働いてんだし、別に良いんじゃない?」


「―――ッ!」


実にあっけらかんとして言われた台詞に、思わず目を見開いたわけだが。


先ほど笑われたからなのか、それとももっと別の何かの所為なのかあたしは、少しばかり顔が赤くなっている気がして、煙草の一本を抜き取るように、手元へと視線を落とした。


火を付け、そして煙を吐き出してみれば、何だかもう、全てのことがどうでも良くなってきて。



「…アンタ、確実にモテないでしょ。」


「失礼なこと言うなよ。
これでも俺、女に困ったことないんだけど。」


「へぇ。
世の中、物好きも居るんだね。」


「じゃあ、俺と付き合う?」


「何でそうなるの?
てか、普通に嫌だし。」


「うわっ、即答かよ。」


またケラケラと笑いやがるので、あたしはため息を混じらせることしか出来なくなったわけで。


どれだけ喋っても、コイツは相変わらず意味不明だとしか思えなかった。



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