向日葵
「寝てる?」


やっとベッドへと戻ってみれば、クロは一足先にと言った感じだろうか、そこに横になっていた。


声を掛けてみると、少し不機嫌そうに寄せられた眉が動いて。



「明日、仕事あるんじゃないの?」


「ん、サボる。」


「…サボる、って。」


それで本当に良いのだろうかと、まるで登校拒否の子供のように思ってしまうのだけれど。


ベッドサイドへと腰を降ろせば、スプリングは小さく軋み、幾分テレビの音を耳触りだと思ってしまうのだが。



「智也に聞いたけど。
仕事、辞めるつもりなんだって?」


「辞めたいけど、多分無理。」


そう、ため息を零したクロは上体だけを起き上がらせ、テレビを消して手探りで煙草の箱から一本を抜き取った。


抜き取って、そしてそれに火をつけ、煙草の煙をくゆらせながら、視線を流して。



「色々あってさ。
でも、いい加減ケジメつけなきゃだし。」


まるで自嘲気味に口元を緩める様に、あたしは思わず眉を寄せてしまうのだけれど。


まぁ、どうせ聞いたってはぐらかされるだけなんだろうし、何も言えないままにあたしは、形にならないため息のみを吐き出した。



「…ケジメ、か。」


そう反復するように呟けば、腕を引かれた刹那、クロの上に覆い被さるような格好にさせられて。


驚いて目を見開けば、ひどく真剣な瞳に見上げられ、無意識のうちに体が強張ってしまうのだが。



「夏希のためって言ったら、笑う?」



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