向日葵
結局何だか疲れただけで終わった気がするのだが、まぁ、約束通り奢ってもらえたわけだし、それで良しとするしかない。


店の外へ出ると、いつの間にか世界は真っ暗闇に染まっていて、ネオン一色の街は、昼間とはまるで別の場所ように、怪しさばかりを増していた。


夜風はやっぱり肌寒くて、見上げた月はきっと誰にも気付かれることがないくらいに、物悲しげに輝くばかり。



「これからどーする?」


「帰る。」


「じゃあ、送ってくよ。」


「いらない。」


「けど、危ないんじゃない?」


「アンタの方がよっぽど危ないけど?」


「俺、全然信用されてないって感じ?」


「そんな感じ。」


相変わらず交わすのは素っ気ない会話ばかりで、車の鍵なのだろうポケットからそれを取り出した彼は、小さくため息を混じらせた。


こんなヤツを信用なんて出来るはずもないし、車なんかに乗ったら、どこにラチられるとも限らないのだから。


“まぁ、良いけど”と、諦めたのかクロはそう言うので、あたしは夜風に揺れる髪の毛を掻き上げた。



「じゃあ、また今度どっか行こうぜ。」


「……は?」


「誘ってんだけど。」


「誘わないでよ。」


何だかもう、会話をすることすら面倒になり、ひとりあたしはきびすを返した。


返して、そして“じゃあね”と顔だけで振り返ってそう言うと、フッと口元を緩められ。



「性病には気をつけてね♪」


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