向日葵
吐息混じりの言葉が耳に触れた時、乳白色でも隠しきれないほどに真っ赤になっている自分に気がついたのだが、時すでに遅く。


悔しくなって小さく睨めば、口元だけを緩めた彼にキスをされてしまう始末。


完璧にあたしは、抵抗の言葉を並べる術を失ったのだ。



「怖かった?」


未だ怒っていると思ったのか彼は、あたしの肩口におでこを乗せ、そんな弱々しいばかりの言葉を紡いで。


首を横に振ることしか出来ないでいると、“ごめんな”と、そんな台詞が小さく消え、二人分の弱さが乳白色に波紋を描いた。



「結局俺、他の男と違うとか言っときながら、欲望に負けちゃった感じじゃん?」


まるで愚痴を零すようなそんな言葉に、胸が締め付けられる。


自嘲気味に口元だけを緩めた彼は、頼りない瞳を上げて。



「俺のこと、嫌いになる?」


必要のない子なのだと言われ続けて育ったのは、あたしもクロも同じで、きっと意図していないのだろう瞳は揺れるばかり。


まるで腫れ物に触るような扱いだなと、そんなことを思わされた。



「あたしよりずっと、クロの方が怖がりだね。」


「そう?」


「そうだよ。」


どこか人の心に踏み込むことを恐れているようで、口元だけを緩めた彼は、“智也には内緒にしとけよ?”と、そんな台詞。


クロの腕の中は、嫌になるくらいに居心地が良すぎて、気付けば抜け出すことを忘れていた。



「しょうがないね。」


そう肩をすくめるあたしに、“上から目線ですか”と、そんな風にして彼は口を尖らせてしまう。


とても移ろいやすい瞳は、まばたきする度にその色が変わるようで、一瞬も逃すことは出来ないなと、そんなことを思った。



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