向日葵
選択肢は、ふたつにひとつ。


このまままたクロの元を去るのか、それともこのままの状態で、彼と一緒に居るのか。


だけども行く当てがないことことよりも、折角手に入れたものを手放すことの方が怖かったのだ。


愛なのか執着なのかはわからないけど、でも、弱さは弱さの中に隠すことで、消えてしまう気がしたから。







寝室へと続く扉を開けてみれば、あたし達の心の奥底のような真っ暗闇が広がっていた。


そんな中で捕まったように引き寄せられ、唇を重ねてみれば、弱々しい瞳が落ちてきて。


あたしを抱きながら、他の女のことなんて考えないで欲しいと、そんなことを思ったのだけれど、だけども別のことを考えているのは、あたしも一緒だったから。


ただあたし達は、同じ痛みを分かち合っているだけで、それは弱さで繋がり交わっているだけのこと。


クロの意識はきっと、今、ここにはない。



「…愛してるから…」


誰のことを、と。


まるで吐き出すように呟かれた言葉に、問い返す勇気は持てなかった。


体を重ねることでしか繋がってない以上、クロとの行為を愚かなものだと思ってしまう。


だけどもそれでしか繋ぐ術を知らないあたしも、十分愚かなわけだけど。


どんなにキスを重ねても、鼓動を交わらせたとしても、体温に触れ合ったとしても結局は、あたし達は痛みを共有した気になっているだけなのだろう。


そんな現実を教えてくれる行為は、愛しさと残酷さが入り混じっていて。



「…やっ、ダメッ…!」


お互いに、一度として名前を呼び合うことはなく、彼はあたしの中に欲望と言う名の弱さを吐き出した。


爪を立てればあたしのことを考えてくれるのかもしれないなんてことを思った自分が、ひどく滑稽に思えてしまって。


あたし達は一体、何のために一緒に居るのだろうか。


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