向日葵
病は気からとか言うけど、何だか治ったはずだった微熱がぶり返してしまったように、幾分頭が痛いような気がするけども。


智也がマンションの下に着いたことを知らせるメールが届き、今しがたあたしは、そこまで降りて来たばかり。


待ち受けていた彼の車へと乗り込むと、不機嫌さを隠すこともなくあたしは、早速煙草を咥えた。



「奢ってやるんだから、嘘でも嬉しそうな顔してくれる?」


そんな嫌味さえ混じらせながら、智也は若干呆れた様子で車を発進させた。


呼び出したのは自分のくせに、我が儘ばかり言わないで欲しいと思ってしまうのだけれど。



「つか、キスマークついてんじゃん。」


「ウザいよ、智也。」


「あれ?
もしかして俺、地雷踏んじゃった?」


「そうみたいだね。」


ため息混じりに白灰色を吐き出せば、彼は肩をすくめたような顔。


そんなものから流れ去る景色へと視線を移し、無意識のうちにあたしは、痛みを放つこめかみを押さえてしまうのだが。



「そんなもんが地雷になってるなんて、龍司さんと喧嘩でもした?」


「別に、喧嘩なんかしてないよ。」


そう、あれは別に、喧嘩と称されるようなものではない。


ただお互いに、自分の感情をどう処理すれば良いのかがわからないだけ。


それだけのことなのだから。



「てか、最近の智也、口を開けばクロの話ばっかだね。」


「心配されてるとか思わない?」


正直今は、お節介にしか感じないのだけど。


だけどもさすがにそんなことは言えなくて、言葉を飲み込むようにしてあたしは、再び窓の外へと視線を投げた。



「面倒になったら話終わらせようとすんの、いい加減やめたら?」


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