向日葵
トドメの一言だと思った。
クロは“サチさん”との間に子供が居て、じゃあそんなの、過去に出来るわけないじゃん、って。
泣いているのだとは思いたくなかったが、でも、視界がボヤけているのが何よりの証拠だろう。
恐る恐る頷けば、良く出来ましたと言わんばかりの瞳が細くなって。
「賢い子で感謝してるよ。
そんな夏希チャンに、俺からプレゼント。」
そう言った彼は、スーツの内ポケットを探り、おもむろに財布を取り出した。
取り出して、そしてその中にある札束を抜き取り、あたしの前に投げつけて。
「お金で割り切った関係になるキミには、やっぱりコレじゃない?」
「…こん、なの…」
「いらないって?
けど、どっちみち出ていくために必要なんだから、受け取っときなよ。」
立ち上がった彼によって見下ろされ、そして吐き捨てたような言葉が降って来て。
玄関一面に散らばった札束の上に、更に上から降ってきたのは、彼のものだろう名刺。
“相葉芳徳(ヨシノリ)”と、ご丁寧にもそんな名前と共に、携帯番号が記されていた。
「困ったらいつでも連絡して?
龍司が忘れられないなら、俺が抱いてあげるから。」
冗談とも本気とも取れないような言葉を残し、彼はドアノブに手を掛けた。
掛けて、そして“だってお金が好きなんだもんね、キミは”と、蔑むような瞳をあたしへと落とし、部屋を出た。
ドアの開け閉めによってにわかに足元に散乱していたお札の数枚が風に舞い上がり、そんな海の中であたしは、思い出したように再び体が震えて。
相葉の言葉が頭の中で繰り返される度に、上手く呼吸が出来なくなる。
あたし達がどうとかじゃなく、あたし自身が、もう本当に無理だと思った。
クロは“サチさん”との間に子供が居て、じゃあそんなの、過去に出来るわけないじゃん、って。
泣いているのだとは思いたくなかったが、でも、視界がボヤけているのが何よりの証拠だろう。
恐る恐る頷けば、良く出来ましたと言わんばかりの瞳が細くなって。
「賢い子で感謝してるよ。
そんな夏希チャンに、俺からプレゼント。」
そう言った彼は、スーツの内ポケットを探り、おもむろに財布を取り出した。
取り出して、そしてその中にある札束を抜き取り、あたしの前に投げつけて。
「お金で割り切った関係になるキミには、やっぱりコレじゃない?」
「…こん、なの…」
「いらないって?
けど、どっちみち出ていくために必要なんだから、受け取っときなよ。」
立ち上がった彼によって見下ろされ、そして吐き捨てたような言葉が降って来て。
玄関一面に散らばった札束の上に、更に上から降ってきたのは、彼のものだろう名刺。
“相葉芳徳(ヨシノリ)”と、ご丁寧にもそんな名前と共に、携帯番号が記されていた。
「困ったらいつでも連絡して?
龍司が忘れられないなら、俺が抱いてあげるから。」
冗談とも本気とも取れないような言葉を残し、彼はドアノブに手を掛けた。
掛けて、そして“だってお金が好きなんだもんね、キミは”と、蔑むような瞳をあたしへと落とし、部屋を出た。
ドアの開け閉めによってにわかに足元に散乱していたお札の数枚が風に舞い上がり、そんな海の中であたしは、思い出したように再び体が震えて。
相葉の言葉が頭の中で繰り返される度に、上手く呼吸が出来なくなる。
あたし達がどうとかじゃなく、あたし自身が、もう本当に無理だと思った。