向日葵
「…ちょっ、先にお風呂っ…!」


「良いって、別に。」


一応制止の言葉を並べてみたのだが、陽平にそんなものが通じないのはいつものことで、そう言われた一言に、あたしは諦めるように小さくため息を零してしまう。


フローリングは冷たく硬く、背中に痛みさえも感じながら見上げた先には、いつの間にか試合の終わってしまったサッカー中継の、興奮冷めやらぬと言った様子のリプレイが、何度も何度も流れ続けていた。


服の隙間を縫って陽平の触手が進入し、あたしの体を汚していく。


なのにこんな行為は仕事と何が違うのかすらわからず、それの延長のように感じたフリをして甘い声を漏らすだけ。


とてもとても、気持ちが悪く感じてしまう。









「…あたし、お風呂。」


行為が終わってみれば、体中は痛みばかり放ってくれ、未だ上に乗る陽平を押し退けて体を起こせば、無言の返事に用済みだと言われているようにさえ感じた。


そして今更ながらに、あたしは陽平に対し、何の感情さえも抱いていないのだと思わされるばかりで。


もちろん陽平もそうなのだろうから、利害が一致しているのだけれど。


だけども何故か、虚しさばかりがあたしを占める。


浴槽に浸かれば今日一日の疲れが一気に襲って来たように、意識と一緒に体がお湯の中へと沈んでしまいそうで。


一体いつまでこんな毎日を繰り返せば良いのだろうなと、最近ではそんなことばかりを考えてしまう。



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