向日葵
「おい、夏希!
お前、しっかりしろよ!」


多分、智也から電話の内容を聞いたのだろうクロは、慌てたようにあたしの体を揺らす。


だけどもまるで何かが音を立てて崩れていくような気がして、とても自分自身を支えることが出来なくなった。


そのままヘナヘナと座り込んでしまったあたしに、もう一度彼は、“夏希!”と、強く名前を呼んで。


どうすれば良いのかなんて、全然わかんない。







『さっき、かーちゃんから電話あってさ。』


智也とは中学の頃から仲が良かったので、当然智也のママも知っているわけだが。


看護師をしながら女手ひとつで智也を育て、いつもあたしのことを気に掛けてくれていたたっけと、思わず懐かしくなったわけだが。



『うん、で?』


『落ち着いて聞けよ?
かーちゃんの病院に、お前の親父が運ばれたらしい。』


『…何、言って…』


本当に、何を言っているのかわからなかった。


悪い冗談だし、突然そんなことを言われたって、笑えるはずがないじゃない。



『脳のナントカで、今、意識不明だって言ってて。
もしかしたら死ぬかもしれねぇからとか、何かそんなこと言ってるし。』


“つか、落ち着けよ?”と彼は、再三のようにそんな言葉を使う。


落ち着いていないのは智也の方で、あたしはと言えば、未だ言葉の意味を理解出来ないまま。



『…行く?』


沈黙はどれほどだっただろう、智也はあたしに、そうポツリと言葉を投げた。


それは、あの父親と会うか会わないかと問われているらしく、瞬間に先ほどの夢を思い出しあたしは、体中の力が抜けて今に至るのだ。


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