向日葵
食事を終え、身支度を整えてあたしは、ひとり街へと向かった。


もう当たり前のように通い慣れたその場所は、“巡回通り”と呼ばれていて、昼夜を問わず、人で溢れ返っている。


風は少しばかり春のものに近づいたはずなのに、人々はみな、それを気に留めることもなく、一体どこに向かっていると言うのか。


ファッションビルが乱立し、まるでこの場所は若者の巣窟で、自然と集まるギャルと、それ目当ての男共。


そんなものを白い目で見つめながらあたしは、まるで定位置のように、コインパーキングの前の自動販売機横に立つ。


春だからって、平日だからって、昼間だからって関係なく、この場所にはたくさんの人が居て、あたしひとりがこんな場所で何をしていようと、咎められることはない。


もっと言っちゃえば、体を売ってたって、咎められることはないんだ。


今日もうるさく鳴り響く、クラクション。


笑い声も雑踏も、あたしにとってはまるで耳触りにしか感じない。





一刻も早く、あたしはこの生活から抜け出すんだ。


生きるために、復讐の為にお金を稼ぐ。


体を売ることが、“悪いこと”だとは思わない。


需要があるから供給してやってるだけだし、大人なんてみんな、クソだとしか思えない。


また思い出し、頭の中で繰り返される怒鳴り声を振り払った。


あたしは、過去を捨てたんだ、と。


そう思い、そしてそう言い聞かせることであたしは、この一年半を過ごしてきたのだから。





ひとりで生きるには、この街は結構快適だった。


ゴミゴミとしているのはあたしにお似合いだし、誰もあたしなんか気にしない分、縛られることなんてないのだから。


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