向日葵
だけども何故か、その日から毎日のようにクロは、パーキング前の自販機横に立つあたしの前に現れるようになったのだ。


彼曰く、散歩は日課、なんだとか。


どーでも良いけど、ハッキリ言って迷惑な話なんだけど。


だけども毎日のようにちょこっとだけ話しては、ヤツはどこかへと消えていくので、仕方なしにあたしは、話し相手程度に思うことにしたのだ。







「毎日毎日頑張るねぇ。」


作ったような感心した顔に、毎度のことながらあたしは、言葉の代わりにため息を吐き出してやるのだけれど。


だけどもそれが、クロまで届くことはない。



「つか、そんなに稼いでどーすんの?」


「関係なくない?」


「何か欲しいもんでもあんの?」


「関係ない。」


「冷たいねぇ。」


「冷たくしてんの。」


そこまで言ってやれば彼は、何だかなぁとでも言いたげに肩をすくめた。


いつの間にやら桜は、五分咲き程度になったらしいけど。


だけどもどんなに桜が咲こうとも、季節が廻ろうともあたしの生活なんて、何ひとつ変わることはないのだから。


クロとのこんな一時も、繰り返してみれば日常のひとコマにしかすぎないのだ。



「じゃあ今晩、飯でも行かない?」


“じゃあ”の使い道が間違ってるかも、なんて議論は置いといて、ご飯を奢ってくれると言う言葉に、思わずピクッと反応してしまったわけだけど。


もちろんそれをクロが見逃すことはなく、あたしが何かを言うより先に、“決まりね”なんて言葉が返された。



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