向日葵
ご飯を食べ、そしてそのまま行くところもなくて、結局クロのマンションまで戻ってきてしまったわけだが。


それでもここが一番落ち着くと思えるし、さすがに疲れが出たのかあたしは、ベッドへと体を投げた。



「眠い?」


「…ん~…」


「朝早かったし、昼寝でもしてれば?」


相変わらず仰向けに寝転がったあたしの上に覆い被さるような状態で、クロはそう、瞳を落とした。


鼻先が触れるか触れないかの距離を縮めたくて、自らの方へと引き寄せたのはあたしの方で、彼は一瞬、驚いたような顔をしたのだけれど。



「んなことしてたら襲っちゃうよ?」


「良いよ。」


今ならば、大丈夫だと思えたから。


キスを交わし、舌を交わらせながら、ゆっくりとそれを離した彼は、ひとつため息を落とすようにしてあたしの胸へと顔をうずめて。



「つか、無理とかしてない?」


「してないよ。」


「俺のこと、嫌ったりしない?」


「しないよ、そんなの。」


本当のこの人は、すごく怖がりで臆病で、きっとそれを知っているのはあたしだけなのだと思うと、それさえも愛しいと感じた。


彼の前髪があたしの首元をくすぐり、まるで子犬みたいに思えてくる。



「今日、一緒に居てくれてありがと。
あたし、クロ居なかったらきっとダメだったと思うから。」


「ん、良い。」


“心臓の音が聞こえる”と、どこか間延びしたような口調で彼は、すぐに話を逸らしてしまって。


ザックリと開いたドルマンスリーブの胸元へと唇が触れて、そして吐息が掛かり、甘い疼きに痺れそうになる。


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