向日葵
♪~♪~♪
水滴垂れるアイスティーを飲み終えた頃合を見計らったように、あたしの携帯が着信を告げた。
持ち上げてみれば、ディスプレイには“クロ”の文字が浮かんでいて、口元を緩めたあたしは通話ボタンに親指を乗せた。
―ピッ
『洗車終わったし、晴れてきたし、気分最高なんすけど。』
「…好きだよね、洗車。」
『それは、嫌味と受け取れば良い?』
「どっちでも良いよ。」
窓から差し込む陽射しに目を細めてみれば、“何だよそれ”と電話口の向こうの彼は、そんな台詞。
溶け残った氷だけになったグラスのストローをかき混ぜると、幾分涼しげな音が響いて消えた。
『迎えに行ってやるよ。
それからどっか飯でも食いに行こうぜ。』
やっぱり心配しているのかなと、そう思ってしまうのだけれど。
場所だけを告げて電話を切ると、伝票を持ってあたしは、喫茶店を後にした。
街の匂いはまだ少しだけ湿っぽくて、もうすぐ季節が変わるのだろうことを表しているようで。
迎えに来たクロの黒いセダンに乗り込めば、いつものパーラメントの煙をくゆらせながら、“お疲れさん”と、彼は言う。
「何かさ、笑えるっつーか。」
「何が?」
「最初の頃、お前、俺の車乗るの超拒否ってたし。
考えてみりゃ、よく頑張ったよ、俺も。」
嫌味返しなのかとも思うのだが、まるで思い出したようにそう口元を緩める顔に、“うるさいよ”とだけあたしは返した。
本当に、嫌になるくらいに平和で、この前のこと全部、もう遠い過去のようにも感じてしまう。
水滴垂れるアイスティーを飲み終えた頃合を見計らったように、あたしの携帯が着信を告げた。
持ち上げてみれば、ディスプレイには“クロ”の文字が浮かんでいて、口元を緩めたあたしは通話ボタンに親指を乗せた。
―ピッ
『洗車終わったし、晴れてきたし、気分最高なんすけど。』
「…好きだよね、洗車。」
『それは、嫌味と受け取れば良い?』
「どっちでも良いよ。」
窓から差し込む陽射しに目を細めてみれば、“何だよそれ”と電話口の向こうの彼は、そんな台詞。
溶け残った氷だけになったグラスのストローをかき混ぜると、幾分涼しげな音が響いて消えた。
『迎えに行ってやるよ。
それからどっか飯でも食いに行こうぜ。』
やっぱり心配しているのかなと、そう思ってしまうのだけれど。
場所だけを告げて電話を切ると、伝票を持ってあたしは、喫茶店を後にした。
街の匂いはまだ少しだけ湿っぽくて、もうすぐ季節が変わるのだろうことを表しているようで。
迎えに来たクロの黒いセダンに乗り込めば、いつものパーラメントの煙をくゆらせながら、“お疲れさん”と、彼は言う。
「何かさ、笑えるっつーか。」
「何が?」
「最初の頃、お前、俺の車乗るの超拒否ってたし。
考えてみりゃ、よく頑張ったよ、俺も。」
嫌味返しなのかとも思うのだが、まるで思い出したようにそう口元を緩める顔に、“うるさいよ”とだけあたしは返した。
本当に、嫌になるくらいに平和で、この前のこと全部、もう遠い過去のようにも感じてしまう。