向日葵
案内された扉の中へと入れば、狭い部屋にパイプ椅子があり、二重のプラスチックだろうか、板に仕切られ、会話をするための穴が開けられていた。


もちろん反対側にも同じものがあり、ひどく緊張してしまう。


刹那、ガチャガチャと音がして、瞬間に体を強張らせてみれば、向こう側の扉がゆっくりと開いた。


開いて、そして彼が、管理官につれられて、あたしの前へと腰を降ろす。



「随分ダサい格好してんじゃん、陽平。」


「うっせぇよ、バーカ。」


連絡を貰ったのは、昨日のことだった。


陽平と最後に会って数日後、彼は薬物所持の現行犯で捕まったのだと言う。


勾留中は接見禁止がつけられていて、全てが終わり、裁判を待つ今、やっと面会が出来るのだとか。


もちろんそれを聞いたのも昨日のことで、陽平自身があたしに連絡を入れてくれと頼んだらしい。



「悪ぃな、何か。」


「しおらしい陽平なんて、ガラじゃないね。」


スウェットにサンダル姿で、透明の板を挟んだ向こうの彼は、珍しくあたしの前で苦笑いを浮かべていた。


もちろん陽平の隣には管理官が座っているので、あまり込み入った話をすることは出来ないのだれど。



「いや、そうなんだけどさ。
彼氏クンに怒られたりしねぇの?」


「怒られるってゆーか、あたし今、ひとりだし。」


「…は?」


「色々あってさ。
離れるのがお互いのためかな、って。」


「意味わかんねぇし、お前の言うこと難しすぎ。」


そう、視線を落としたあたしに陽平は、肩をすくめることしかしなかった。



「つか、愚痴りに来たなら帰れっつの。」


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