向日葵
煙草があまり吸えないのも、クスリが抜けるのも結構キツいと言っていたけれど、その辺については自業自得だし。


そんな他愛もない会話をしているうちに、管理官のおじさんから、もうすぐ面会時間の15分が終わると告げられた。


本当にもう、これで最後。



「差し入れ。
アンタの好きそうな雑誌、適当に見繕っといたから。」


「おう、さすがじゃん。」


「笑ってんじゃないの!
これに懲りたら、少しは更生しなよね?」


「……はい。」


そう、少し小さくなった陽平は、やっぱり何だか変な感じだった。



「今度女出来たらさ、大事にしてやるつもり。」


「…うん。」


「もう殴ったりしないようにして、んでちゃんと仕事して。
そんでいつか一人前になったら、親父にも今回のこと、頭下げに行こうと思う。」


「うん、そうだね。」


「あの時拾ったの、夏希で良かった。
お前にとっちゃ最悪な男だったかもだけど。
ホント、悪かったな。」


「良いよ、もう。
あたし陽平居なかったら、今頃野垂れ死んでたろうし。」


「そか。」


「頑張ってね、陽平。」


「お前もな。」


口元を緩めると、“時間です”と、そんな言葉が告げられ、陽平は立ち上がった。


互いに背中を向け、この狭い一室から出ることで、本当のサヨナラになったのだろう。


当分天気予報は晴れマークで、アンタの傘は出番がないけど、でも、たまに思い出したように雨が降ると、あれで結構活躍してるんだ。


出会えたことに感謝出来るようになった分、あたしは少しは成長出来たかなって、そんなことを思いながら、扉を閉めた。


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