向日葵
「明日はお誕生日ね、夏希ちゃん。」


どうしても独りで居たくなくて、逃げるようにお隣のおばあちゃんの家にやってきた。


いつも突然来るあたしに、彼女は怒るどころか嬉しそうに微笑んでくれ、“孫が出来たみたい”と喜んでくれるのだ。


ご飯食べさせてくれて、その上仕事の愚痴まで聞いてもらって、本物のおばあちゃんのようだと思ってしまう。



「何か、プレゼントしなくちゃね。」


「良いよ、そんなの。」


「おめでたいことなんだから、そんな風に言わないで?」


「じゃあ、おばあちゃんの煮物ちょうだい。」


「それだけで良いの?」


「それが良いの。
あたしあれ好きだし、今までそんなの作ってもらったこととかなかったから。」


そう言ったあたしに、腰の曲がった彼女は少し悲しげに口元を緩めた。


家庭の事情ってやつを詳しく話したことなんてないけど、でも、きっとおばあちゃんはわかっているのだろう。



「じゃあ、あとでタッパに詰めておくわね。」


「やった、ありがと♪」


19は大人なんかじゃないし、今までロクに祝ってもらったこともないから、別に喜ばしいことでもないんだけど。


昔、誕生日にケーキを買ってもらった友達の話を聞いて以来、あたしの大嫌いなものリストにそれが加わったのは、言うまでもないだろう。


何で生まれてきたのかなって、そんなことを考える誕生日は、やっぱり今も苦手だよ。



「明日もお仕事?」


「いや、病院。
そのあと香世ちゃんがご飯奢ってくれるって言ってたし。」


別に狙ったわけでもないんだけど、たまたま予約が取れたのが誕生日だっただけ。


それを話したら、香世ちゃんもやっぱり嬉しそうで、何だか苦笑いを浮かべることしか出来なかったわけだけど。


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