向日葵
9月を迎え、明日はいよいよお店のオープンの日だ。


そんな時に連れて来られたのは何故か海で、牛乳飲んでないよ、と言ったあたしに彼は、特別に飲んだことのしてやるよ、なんて言ってはぐらかした。


何で海に来たのかと、そう問うたのに、俺が来たかったから、なんて台詞で、相変わらず要領を得ないまま。


沈みゆく西日に照らされ、オレンジに染まる水面がキラキラとしていて、まるで夏の終わりの色のようだと思った。


風は幾分涼しく優しく吹いているようで、目を細めてみれば、潮の香りに混じりながら、パーラメントの白灰色がそれに溶ける。



「結婚、しない?」


「……は?」


「いや、そのうち。」


突然に、何を言い出しているのだろうかと思ったのだが。


眉を寄せて顔を向けたあたしに彼は、まるで誤魔化すように曖昧な笑みだけを浮かべたまま。



「いつか、子供100人くらい作ってさ。」


「死ぬって、そんなに産んだら。」


「…じゃあ、80人?」


「変わんないよ、あんま。」


「まぁ、その辺嘘だけど。
でも、マジでお前とは一生一緒に居ても楽しいだろうし、子供作ったらもっと楽しいと思うぜ?」


「…あたし、は…」


そこまで言って、言葉が出なくなった。


正直、あたしなんかがマトモに人の親になんてなれるとも思わないし、クロが居てくれたらそれだけで良いのに。


あの両親と同じ血が流れてるあたしが、子供なんか育てるべきじゃないんだ。



「…怖い?」


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