向日葵
「最初の頃、俺、お前のこと向日葵みたいだとか密かに思ってて。」


「…え?」


「何があっても顔上げて立ち向かうっつーか?
格好良いなとか思ってたんだ。」


まるで思い出したように笑う様に、どうしたものかと思ってしまうのだけれど。


次第に沈みゆく西日が頭だけとなり、幾分薄墨に染まった世界の中で、クロの言葉が落ちてくる。



「夏の希望って名前、良いよね。」


「―――ッ!」


「ついでだし、結婚も子供も、来年の夏で良くない?」


「ちょっ、何言ってんのよ!」


思わず間抜けに声を上げてしまったあたしを彼は、ケラケラと笑うだけ。


本当に調子が狂うし、ため息を混じらせた時、太陽はすっかり姿を消してしまった。



「そういや俺、まだ言ってなかったっけ。」


「…今度は何よ。」


「誕生日、俺ら一緒なんだぜ?」


そう、おどけたように言われ、初めは嘘なんだと思ったけど。


目を見開くあたしに彼は、口元を緩めて“笑えるっしょ?”なんて言う。



「だからお前は、俺と結婚すんのが運命なんだって。
ってことで、もう諦めとけよ。」


「…納得出来ない。」


「はい、却下。」


「自己中、オヤジ!」


「うるせぇし、お前にだけは言われたくねぇって。」


フンッと顔を背けるあたしに苦笑いを浮かべながら、クロは諦めたように“怒るなよ”と言う。


だけどもやっぱりあたしは馬鹿なので、運命なら仕方がないのかな、なんて思わされてしまって、“しょがないね”とだけ返してやった。


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