向日葵
「何か疲れてね?」


「まぁね。」


陽平には、売春をしていることを言っていない。


単に言う必要がないからってだけだし、彼もまた、あたしが昼間何をしているかなんて聞いても来ないわけで。


ついでに言えば、あたしも陽平が何の仕事をしているのかなんて、聞いたこともないのだけれど。



「じゃあさ、ビタミン剤飲む?」


「…ビタミン剤?」


首を傾ければ、立ち上がった陽平は近くの引き出しを開け、小さなビニールパケを取り出した。


目を凝らしてみれば、数粒のオレンジ色の錠剤のようだが。



「いらないや。
あたし、そういうのって苦手なんだよね。」


「飲んだら元気になれんぜ?」


「ビタミン剤で元気になれるとか、そんなわけないじゃん。
けど、ありがとね。」


ははっと笑ってあたしは、荷物を投げ、お風呂場に向かった。


体が疲れてるのはいつものことだが、今はそれよりも、精神的なことの方が大きいのだろうし。


あたしに気遣いを見せてくれた陽平の姿には驚いたけど、だからあたし達は上手くやれているのだろうなと、そんな風に思った。


だって陽平だけが、あの頃のあたしに手を差し伸べてくれたのだから。



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