向日葵
その日からあたしは、巡回通りに立つことをやめた。


理由はただ、クロに会いたくないから、ってだけ。


それ以上でも以下でもない。


駅に居たり、はたまた地下街に居たり、雨の日はマックだったりもするのだけれど。


立つ場所が変わったからと言って、あたしの毎日も、心持ちさえも何ら変わりはしないのだ。


あたしはこの生活を、やめることなんて出来ないのだから。



♪~♪~♪

鳴り響いたのは、メール受信の音だった。


送信者は昔の女友達で、件名のところには、“結婚しました”なんて文字と共に、大量のハートマークが入っている。


そこまで見てあたしは、内容を確認することもなく削除ボタンに手を掛けた。


馬鹿馬鹿しくて、やってられない。


結婚することが、そんなに嬉しいことだとでも言うのだろうか。


思い出すのはいつも幼少の頃の記憶で、もうこびり付いたように離れないそれに、諦めたようにため息を混じらせた。


結婚することで幸せになれるなんて、そんなことは思わない。


ましてやあたしは、そんなことをしたいとさえも思わないのだ。


あれが愛した合った末の結末だと言うならば、そんなものは見たくもないから。


じゃああたしは、一体何のために生まれてきたんだろうな、って。


そんなことさえ頭をよぎり、ひどく春晴れの空に似つかわしくないテンションだな、なんてことを思わされた。


やっぱりあたしには、愛も恋も必要ない。



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