向日葵
「…元気、してた?」


「智也こそ。」


一年半ぶりの突然の再会に、会話はまだ少しぎこちなくて、苦笑いを浮かべながら彼は、あたしの横へと腰を降ろした。


ジャズが奏でる店内の隅、ライトの明かりさえも乏しいけれど、だけどもうるさいよりは幾分マシだと感じてしまう。



「お前、地元離れてどこに住んでんの?」


「隣街だよ。」


そう告げてみれば、驚いた顔がこちらに向いた。


向いて、そして“マジ?”なんて問われ、あたしはその意味がわからずに首を傾けてしまうが。



「つか、俺も今、隣街に住んでんだよ!」


「えっ、ホントに?」


「ホントだって!
って言っても、会社の寮なんだけどさ。」


へヘッと笑う智也の顔は、そう言いつつもどこか誇らしげで、やっぱり少しばかり、羨ましく感じてしまった。


あたしも変わってしまったように、智也も当たり前に変わったってことだろう。


それから智也は二人分のビールを注文してくれ、それで乾杯した。



「つか、俺も夏希のこと心配してたんだけどさぁ。
携帯ぶっ壊れて、そのまま連絡先わかんなくなって。」


そう智也は、ビールの味に眉を寄せながら言った。


仕方なくひとつため息を落とし、無言で携帯を差し出すあたしに、彼はやっぱり苦笑いのままに、それを自分の携帯に入力して。


“今度デート誘っちゃいますけど”なんて台詞にあたしは、お腹を抱えて笑ってしまう。


智也は相変わらず馬鹿で、こうやって再会しても、昔と同じように何ら変わりなく親友の形に戻れてしまうから不思議だ。


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