向日葵
そこまで順を追って説明してやれば、やっと理解したのか彼は、“あぁ!”とばかりに小さく漏らす。


道行く人々は、言い争っている風なあたし達を、少しの好奇の目で伺っているのだが、もうそんなの気になんてしてられないわけで。



「ははっ、アンタ面白いな。」


だけどもどこが面白かったのか男は、怒りに満ちたあたしに向け、そう口元を緩めたのだ。


明らかにこの態度は、馬鹿にしているとしか受け取れないのだが。


なのだが彼は、あたしの予想に反し、先ほどあたしの手から奪った携帯を広げ、そしてそれをあたしに突き出して。



「番号、教えとけよ。」


そう言ったのだ。


もちろん今度その言葉の意味がわからなかったのはあたしの方で、思わず眉を寄せるようにして首を傾けてしまうのだが。


これはもしや、新手のナンパ?



「…あたしの番号なんか聞いて、どうすんの?」


「お礼、してやろうかと思って。」


「……は?」


コイツは、本気で何様のつもりだと言うのか。


あたしが上から目線で言われる筋合いなんてないし、第一、こんな意味不明な男に番号なんて教えようとも思わない。



「絶っ対に嫌。」


「は?
自分が言ったんだろ?
とりあえず俺今急いでるし、後で連絡してやっから!」


“ほら!”と再び真っ黒の携帯が目の前に突き出され、あたしはあからさまに口元を引き攣らせてしまう。


だけども“マジだっつーの!”と、そんな言葉が付け加えられ、ため息を混じらせてあたしは、自分の携帯を男に差し出した。



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