向日葵
無理やりヤられ、抵抗したら殴られて、永遠とも思えるほどの長い時間、そんなことは繰り返された。


クロが抱き締めてくれたぬくもりさえも、もう体には残されてはいない。


それ以前に、あんな風になったのだし、きっと嫌われてしまったのだろうけど。


まぁ、あたしの人生なんて、所詮そんなものなのだろう。







「少しはわかった?」


そう、陽平はため息を混じらせながら、隣で煙草の煙をくゆらせた。


男なんて信じてなかったはずなのに、陽平の優しさを垣間見た気がして、気を許していたのが悪かったのだろうか。


それとも、クロを好きになったから、バチが当たったのかな。



「お前はさぁ。
俺が居なかったら生きてけないじゃん?」


勝手に決めないでよと、そう思ったのだけれど、言えばまた殴られそうな気がして、言葉を飲み込むように唇を噛み締めた。


体中が痛みを放ちながらも、その熱を奪うほどに冷たい、背中のフローリング。


梶原にヤられたあの日も確か、こんな感じだったっけ。



「アンタ、相当狂ってんね。」


そう言った言葉に何かが返されることはなく、フラフラと体を起こし、おぼつかない足取りのままにあたしは、お風呂場へと向かった。


夢ならば覚めて欲しいと願い、全てを洗い流したはずなのに、記憶の中にこびり付いたものが流れ去ることはなくて、痛みばかりに支配された。


陽平は結局、支配欲であたしを縛り付けているだけのこと。


それが彼の本性だったのかと、そんなことに気付くのに一年半も掛かった自分が、ひどく馬鹿みたいだと思わずにはいられなかった。


元々、失うものなんて何もないと思っていたのだから。


これで良いんだと、そう言い聞かせるようにしてあたしは、シャワーのお湯を頭から被った。


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