向日葵
もう、死んでしまいたかった。


あたしの存在は、一体何なんだろうか、と。


遠のく意識の中で、そんなことを思ってしまう。



「…すっげぇ好き…」


何故陽平は、今更になってこんなことを口にしたのだろうか。


タマを喰ってることも、そんな言葉も、知らないままならまだ良かったのかもしれないのに。


ラリった上に“好きだ”と告げられ、やっぱり陽平は狂ってるとしか思えなかった。


あたし達のこの一年半、ただ利害関係の上にだけ成り立っていると思っていたのに。


なのに、そう思っていたのはあたしだけだったのかな。


わかんないや、もう何も。







『ここ、俺の部屋。
好きに使って良いから。』


『…アンタ、何考えてんの?』


『別に。』


第一印象から、陽平のことを狂ってるヤツだと思っていた。


家出してる見ず知らずの女を家に上げることだけでもどうかしてるのに、その上“住んでも良い”などと言うのだから。



『家賃も何もいらねぇぜ?』


『……は?』


だけど、次の台詞で合点がいった。



『その代わり、俺の好きな時にセックスさせてもらうけど。』


そういうことか、と。


“どうする?”と顔が近づけられ、チラッと窓の外へと視線を移せば、先ほどよりももっと近づいたのだろう台風が、窓枠をガタガタと揺らしていた。


こんな中で、今更出ていくことなんて出来るはずもない。



『じゃあ、契約成立だね。』


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