向日葵
「…あたし、ね。
もう、この街出ようと思うんだ。」


『…何、言ってんの…?』


「それでさ、どっかまた別の街に行って、同じことしてさ。
多分、あたしの人生なんて一生こんな感じなんだろうし。」


言ってて嫌になってくるけど、でも、精一杯で明るく振舞うことしか出来なくて。


“夏希!”と、あたしの言葉を遮るように電話口の向こうからはそう聞こえ、堪えていたものが自然と溢れ出してくる。


泣きたくなんてないはずなのに、いつまで経ってもあたしは、弱い子のまま。



『…お前、それで良いとか、ホントに思ってる?』


「―――ッ!」


そんなクロの一言に、簡単に揺さぶられてしまう。


気付けば通りには幾分人が増え、足早な人並はあたしを通り過ぎる。


久しぶりに外の空気を吸ったはずなのに、それはちっとも美味しいとは感じられなくて。



「…助けてっ…」


吐き出すように絞り出すと、まるで決壊してしまったかのように涙が溢れ、その場にうずくまることしか出来なくなった。


今更ながらにあたしは、ずっと助けてくれる人だけを求め続けていたのだと気付かされてしまうのだから。



『今、どこ?』


場所だけを告げあたしは、電話を切った。


顔を出し始めた太陽が朝モヤを拭い去り、また新しい一日が始まることを告げてくれる。


毎日はこうやって同じように繰り返されるけど、それは決して焼き増しのものではないのだ。


数日外に出ていなかっただけで、幾分空の色があたたかみを帯びたような印象を受けた。



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