向日葵

瞳を開くと世界はオレンジ色で、夕方なのだと頭で理解してみれば、一体どれくらいの時間眠っていたのだろう、なんて思ってしまうのだが。


それでもこんなに穏やかに眠れたのは、いつ以来だろう。


視線だけを動かすと、あたしは何故かベッドに寝ていて、おまけにそんなあたしに腕枕をした状態で、隣でクロが寝息を立てていることに驚いた。


驚いて、そして無意識のうちに体を起こすようにして離れると、彼は少しばかり眉を寄せたのだが、あたしはと言うと、そんな顔をまじまじと見つめてしまう。


寝顔なんて、初めて見た。


こうして改めて見ると、何故だか胸が軋み、名前も知らない感情が込み上げてくるのを感じてしまう。


これが、愛しさと呼ばれるものなのだろうか、と。


そんなものがあたしの中に存在していたのかと、そんなことを思うと、思わず笑ってしまうのだが。



「あっ、ごめん。
起しちゃった？」


ボーッと眺めていると、不意にそのまぶたがゆっくりと開き、焦ったようにそう聞いてしまったのだが。


クロの瞳は未だ夢と現実の境を彷徨っているようにも見え、少しの後、“あぁ”とまるで何かを理解したかのような声が漏らされた。



「つか俺、いつの間にか寝てたのか。」


まるで独り言のように呟きながらクロは体を起こし、欠伸を混じらせる。


とりあえず的に“おはよう”と言ってはみたものの、その挨拶はひどく間抜けで、“何だそれ”と返される始末。


だけどもそんな空気感は嫌いじゃなくて、クロと一緒に居れば、ずっとこんな風にして過ごせるのだろうかと、そんなことを思ってしまう。



「なぁ、腹減らない？」


「…あたし、あんまり食べたい気分じゃない。」


「ダメ。」


そう一蹴されてしまえば、今までの経験から、クロの言うことを聞かざるを得ないのだろうとは思うのだが。


強引だなと思う一方で、それでもいつの間にかそんなことを嫌だと感じている自分は居なくなっていて、何だかなぁとあたしは、苦笑いを浮かべてしまう。