向日葵
だけども少しの沈黙の後、何かに気付いたのか智也は、バツが悪そうに視線を外し、そのままあたしの方を見ることはなくて。


そんな瞳の色が、まるで汚いものを見ているかのようで、無意識のうちに助けを求めていた自分の馬鹿さ加減がひどく身に沁みてしまう。



『…誰?』


『梶原。』


『―――ッ!』


再び向けられたのは、やっぱり驚いた顔で、そんなものを鼻で笑った。


玄関先で立ち尽くしたまま、二人足元に視線を落とし、沈黙ばかりが続いて。



『あたし、この街から出る。』


『……え?』


『サヨナラ、言うために来たから。』


ずっと一緒に馬鹿やってきた智也でさえも、あたしをそんな目で見るんだと、そう思った瞬間には、言葉は口を突いていたのだ。


きっとこれが、精一杯のあたしの強がりだったのだろうけど。



『何言ってんだよ!
警察行くぞ!!』


そう言って掴まれた腕を、気付くとあたしは振り払っていた。


梶原の顔がフラッシュバックしたように、呼吸ばかりが乱れ、そんなあたしを智也は、戸惑うような瞳で見つめて。



『逃げるなんて間違ってんだろ!
ヤられた方が泣き寝入りとか、そんなのおかしいよ!』


声を荒げた智也に、あたしは瞬間に唇を噛み締めた。


気付けば涙が溢れていて、だけどそんな瞳のままにあたしは、智也を睨み付けて。



『…アンタに何がわかるのよっ…』


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