向日葵
「俺は、夏希に対して友達以上のことはしてやれないけど。
でも、龍司さんなら絶対、お前のこと支えてくれると思うんだよ。」


「―――ッ!」


「大親友が薦めてんだから、間違いはねぇぞ?」


「まぁ、参考程度にさせてもらうわ。」


そう、口元だけを緩めると、“意地っ張りめ”と、そんな風に鼻で笑われた。


智也が言うのだし、それに間違いはないのだろうけど、でも、それで良いのかがわからない。



「龍司さんのこと、好きなんじゃねぇの?」


「…好き、だけど…」


「だけど?」


だけど、汚いあたしが人を好きになっちゃダメなんだ、とは言えなくて、言葉を飲み込むようにして、首を横に振った。


智也はそんなあたしにため息を向け、短くなった煙草を消して。



「俺が知ってる限り、お前の口からそういうの、初めて聞いたよ。」


「…うん、そうかも。」


「なら、自分の気持ちに正直になれば?
さっきも言ったけど、龍司さんなら絶対大丈夫だって!」


「―――ッ!」


瞳を丸くすることしか出来なくなったあたしに、智也はニィッと歯を見せるだけ。


何だかまるで、背中を押されたようだなと、そんなことを思うと、苦笑いを浮かべてしまうのだが。



「じゃあ俺、帰るけど。
恋愛相談なら安くしとくから、いつでも電話してこいよ。」


「ケチ。」


そう口を尖らせると、そんなあたしを見てケラケラと笑った彼は、“じゃあな”と言って部屋を出た。


智也と会わなかった一年半、アイツも随分変わったなと、そんなことを他人事のように思ってしまう。


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