向日葵
こうして顔を突き合わせて食事をしていると、あたし達の関係は一体何なんだろうかと、そう思わずにはいられなかった。


別にクロは口説いてくるわけでもなく、ただこうやって、一緒に過ごしているだけ。


そんな関係に名前をつけようとする方が間違っているのかなと、そう思いながらカレーの一口を口に運んだ。



「そう言えば、あたしってクロのこと、何も知らないままだ。」


「知りたくなった?」


「…ちょっとだけ。」


そう小さく言うと、フッと口元を緩めた彼は“じゃあ、何が聞きたい?”と、そんな風に問うてくる。


首を傾けて考えてみると、改めて基本的なことさえ知らなかったんだなと、そう思ってしまって。



「年は?」


「にじゅーご。」


「家族は?」


「居ないね。」


「…え?」


「まぁ良いじゃん、その辺は。」


そう濁されると、それ以上は聞けなくて。


“次は?”と催促されてしまい、笑ってる顔に少しの違和感を覚えるのだけれど。



「じゃあ、ずっと独りで暮らしてるの?」


「まぁ、そんな感じ。」


やっぱり言葉は軽く流され、そのまま何も語られることはなかった。


何だかクロが触れて欲しくないと言ってるようで、少しばかり胸が軋んでしまう。


人のことをもっとよく知りたいと、そんなことを思ったのは初めてだったのだが、だからと言って何を聞けば良いのかもわからなくて、次の台詞が思い浮かばないまま。


訪れたのは沈黙で、彼は“それだけかよ”とまた、口元だけを緩めた。


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