向日葵
いつまで経ってもあたしは、人と会話を交わすことが苦手で、それ以上に自分のことを話すのは、もっと苦手で。


だけどもクロが何かを聞いてくることはなく、そんなことに少しばかり救われた気がした。



「…あたし、さぁ…」


「ん?」


両親のこととか、梶原のこととか、全部クロに言いたくなったのだけれど、その続きを紡ぐことは出来なくて、そのまま言葉を飲み込んだ。


これ以上醜い部分を知られることが怖くて、“何でもない”と、そう言って結局は、首を横に振ってしまって。



「何?
俺に告白でもしようとした?」


「んなわけないじゃん!」


「ないのかよ。」


“残念”と、そう漏らしたクロは肩をすくめ、煙草を咥えてしまう始末。


だけども口元は隠すこともなく笑みを浮かべていて、またあたしで遊んでるなと、そう思わされてしまう。


ひとつため息を落とすと、幾分自分の顔が赤くなってる気がして、無意識のうちに顔を背けてしまうわけだけど。



「ははっ、可愛い。」


「なっ!」


今度は隠せないほどに赤くなってしまい、そんなあたしを見たクロは、ケラケラと笑うだけで。


あからさまに頬を膨らませてやれば、“怒るなよ”と、そんな一言が投げられる。



「お前、初めて会った時から怒ってるよな。」


「アンタが怒らせてんでしょ?」


「いや、夏希が勝手に怒ってんじゃん。」


「うるさいよ!」


思えば、クロとのこんな口喧嘩はしょっちゅうで、あたしが今まで生きてきた中で、これほど喜怒哀楽のままに喋ることなんてなかっただろう。


ずっと自分を押し殺し続けてきて、でも、今は少しだけ気持ちが楽になったようにも感じ、そんな自分自身にどうしたものかと肩をすくめた。


< 84 / 259 >

この作品をシェア

pagetop