向日葵
そんな風にして日々を繰り返していくうちに、体の傷は幾分癒えた。


料理のレパートリーも少しばかり増えけど、でも、いつまでもこうしてもいられないなと、そんな小さな焦りも出てくるわけで。


求人情報誌を眺めながら、だけども意識はまるでここにはない。


あれから約一週間、陽平からの連絡はないが、もしまた街で偶然にも再会したらと、そんなことを思うのが怖かった。


何より高校さえ行ってないあたしが働ける場所なんて、昼職では数が少ないのも、また現実なわけで。


どうしたものかと思いながら、煙草の本数ばかりが増えていく。



「仕事、見つからないんだ?」


「…うん。」


「良いのに、無理して働かなくても。」


「あたしが嫌なの。」


「へぇ、頑固。」


「うるさい。」


イーッとした顔を向けると、クロはそんなあたしを鼻で笑った。


だけどももう怒る気にもなれなくて、諦めて冊子を投げると、パサッとそれが小さく音を立てた。



「働いて、それでどうすんの?」


そう問われた言葉に、あたしは無意識のうちに視線を落としてしまう。


ここを出ていくとはさすがに言えなくて、だけどもそんなあたしをまるで見透かしたように、クロはひとつため息を落として。



「ここに居る理由が欲しいんだろ?」


「―――ッ!」


エスパーなのかと思って、驚いたように目を丸くして顔を上げたあたしに、彼はフッと口元だけを上げた。


上げて、そして視線を真っ直ぐにあたしの方に向けて。



「俺と付き合えば良いんじゃない?」


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