向日葵
裏切りの
陽平との生活に慣れることに、そう時間は掛からなかった。
だってこの部屋にはあたし達の暮らした一年半が詰まっていて、それへと溶け込むことが、まるで自然なことのようにも思えたのだから。
『俺、初めは興味本位だったんだ。
でも、弱くて抜けられなかった。
夏希のこと傷つけるまで、大事なことにも気付けなかったんだ。』
そう言った陽平に抱き締められた時、何とも言えない気持ちにさせられた。
だからこそ、もう一度信じてみよう、と思うことが出来たんだ。
あれ以来、陽平は変わってくれた。
だからあたしもそれを支えたくて、傍に居続けた。
「お前、マジで馬鹿なんじゃね?」
呼び出されて来てみれば、怒りに満ちたような、それでいて呆れているような智也の開口一番はこれで、あたしはため息だけを混じらせた。
智也がそんな風に言うだろうことは百も承知だったし、こんな顔も予想通り。
「良いよ、馬鹿で。」
「何それ。」
「智也が言ったんでしょ?」
「だからお前は馬鹿なんだよ!」
ドンッと机を叩いた音が、昼間の静かな喫茶店内に響き、彼は舌打ちを混じらせた。
カップの中のコーヒーは揺れ、再び訪れた沈黙の中で、あたしは小さくそれをすするのみ。
「夏希が頭悪いのは知ってるけど、それでも引き算よりは簡単なことだと思うんけど。」
「何が?」
「どっちを選ぶか、ってこと。」
そうあからさまにため息を混じらせた智也は、煙草を咥えた。
あれから三日、ゴールデンウィークは近くて、外を歩く人波も、にわかに湧いているように見受けられるが。
だってこの部屋にはあたし達の暮らした一年半が詰まっていて、それへと溶け込むことが、まるで自然なことのようにも思えたのだから。
『俺、初めは興味本位だったんだ。
でも、弱くて抜けられなかった。
夏希のこと傷つけるまで、大事なことにも気付けなかったんだ。』
そう言った陽平に抱き締められた時、何とも言えない気持ちにさせられた。
だからこそ、もう一度信じてみよう、と思うことが出来たんだ。
あれ以来、陽平は変わってくれた。
だからあたしもそれを支えたくて、傍に居続けた。
「お前、マジで馬鹿なんじゃね?」
呼び出されて来てみれば、怒りに満ちたような、それでいて呆れているような智也の開口一番はこれで、あたしはため息だけを混じらせた。
智也がそんな風に言うだろうことは百も承知だったし、こんな顔も予想通り。
「良いよ、馬鹿で。」
「何それ。」
「智也が言ったんでしょ?」
「だからお前は馬鹿なんだよ!」
ドンッと机を叩いた音が、昼間の静かな喫茶店内に響き、彼は舌打ちを混じらせた。
カップの中のコーヒーは揺れ、再び訪れた沈黙の中で、あたしは小さくそれをすするのみ。
「夏希が頭悪いのは知ってるけど、それでも引き算よりは簡単なことだと思うんけど。」
「何が?」
「どっちを選ぶか、ってこと。」
そうあからさまにため息を混じらせた智也は、煙草を咥えた。
あれから三日、ゴールデンウィークは近くて、外を歩く人波も、にわかに湧いているように見受けられるが。