向日葵
「ただいま。」


いつも通りに陽平の部屋に戻り、そしていつも通りの言葉を紡ぐと、あたしに気付いた彼は、“どこ行ってたんだ?”と、そう問うてくる。


テーブルの上の灰皿は、あたしが外に出ていた小一時間の間にいっぱいになっていて、タマを我慢するためだと言っても、明らかに本数が増えたなと、そう思わされてしまう。



「ちょっと買い物行ってただけじゃん。」


「あの男んとこ?」


「は?」


そう言った瞬間、腕を引っ張られるようにして寝室まで連れて行かれ、ベッドへと投げられた。


強く叩きつけられると、その所為でスプリングは大きく跳ね、体を起こすより先に、陽平はあたしの上に覆い被さって。



「答えろよ。」


「ちょっ、やめっ!」


だけども制止の言葉が聞き入れられるはずもなく、唇を塞がれて。


意志とは別に体は強張り、それ以上抗うことも出来ず、固く目を瞑ると、恐怖心ばかりに支配される。


陽平の元に戻って来てから三日あまり、日増しに彼は苛立ちを募らせ、乱暴にあたしを求めたがる。



「…やめっ、お願っ…」


「じゃあ、また俺がタマ喰っても良いの?」


「―――ッ!」


この人は、一体何を言っているんだろうか、と。


そう思って目を見開いた瞬間、持ち上げられたのは口角で、“ダメなら黙ってろよ”と吐き捨てられた。


その瞬間に貫かれ、痛みの中で生理的な涙ばかりが溢れ出す。


あたしが我慢すれば、陽平がタマの呪縛から逃れられるのならと、消えゆく意識の中で、自分自身にそう言い聞かせた。


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