向日葵
「…ごめんな、夏希…」


未だベッドから起き上がる気力を持たないあたしに、陽平はそう、小さく漏らした。


漏らして、そしてあたしの髪を整えるように指先で梳く。



「けど俺、夏希がどっか行くんじゃないかと思うと、不安で堪んなくて。」


「…良いよ、大丈夫だから。」


そう口元だけを緩めると、彼は優しくあたしを抱き締めた。


陽平の中に弱さが隠れていること、それを知ってるのも、受け止めてあげられるのもあたししかいないのだと思うと、

彼のことを怖いなんて思ってる自分の方がどうかしているようにも思えてきて、その腕の中であたしは、首を横に振った。



「あたしはどこにも行かないから、陽平は何も心配しなくて良いよ。」


「…夏希…」


陽平が怒るのはあたしの所為で、彼はあたしのために、タマも仕事も辞めてくれたのだ。


誰も必要となんてしてくれなかったあたしを、陽平だけは、求めてくれたのだから。


クロのぬくもりはもう消えてなくなり、記憶の中にしか存在していない。


それでもそんなものを思い出すことすら悪いことのようで、彼の記憶を無理やりに、奥底へと追いやった。


だってあたしは、陽平を選んだのだから、と。



「好きだよ、陽平。」


「俺もだよ。」


何が正しくて、何が間違ってるのかなんて、何もわからなかった。


だけども誰にもわからないそんな答えを求めることこそが、間違っているのではないのかと、甘い味のキスの中で、そんなことを思ってしまう。


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