向日葵
5月を迎える頃には、こんな生活も3週間を過ぎていた。


仕事が決まらないらしい陽平は、日がな一日中家に居て、それに付き合う形のあたしも、もちろん家に居るわけで。


毎日がただダラダラと過ぎ、焦りばかりが募っていくのだが、それを言えば陽平を怒らせそうで、気付けばニート状態を黙認する形となっていた。



「やべぇよ、夏希。」


珍しく貯金通帳を開いた陽平は、そう言ってため息を混じらせた。


“見てコレ”と、そう言われてそれを覗き込めば、残りが僅かとなった金額に、我が目を疑った。


今まで陽平がいくら稼いでいたのかは知らないが、金使いが荒いことから、貯金はしていないのだろうとは思っていたのだが。


ここから更に家賃や光熱費を引かれるとなると、残る額なんてたかが知れてる。



「…やっぱ、プッシャーに戻るしかねぇのかなぁ…」


煙草の煙をくゆらせながらに漏らされた言葉に、戸惑うように視線を向けた。


そんなことをすれば、また陽平がタマに手を出すかもしれないと思うと、絶対にそれだけは避けなくてはならないのだ。


だからと言って自分が貯めているお金に手を出すことは出来ず、長くため息を吐き出してしまう。



「だったら、あたしが働くから。」


「え?」


「だから、絶対に陽平は、戻ったりしないで。」


そう強く瞳を見据えると、“夏希”と、ぶつかったそれは僅かに揺れた。


陽平があんな仕事に戻るくらいなら、再びあたしが体を売る方がマシだ。


もうずっと、そうやって生きてきたじゃないかと、そう言い聞かせているのに、不意に頭をよぎったのはクロの顔で、急いでそれを振り払った。


煙草を咥えて呼吸を落ち着けるようにして煙を吸い込み、ため息混じりにそれ吐き出すと、“ごめんな”と呟かれた。


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