【完】名のないレター
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俺はガラッと教室のドアを豪快に開けて、入った。すると、一斉にクラスメイトの視線が俺の方に向けられた。
もう、授業が始まっていたのだ。
「こらー、那月。十分遅刻だぞ。何してたんだ!」
数学の山地先生(やまじせんせい)が頭をかきながら、怒鳴り声を上げた。
「……すいません。ちょっと具合悪くて」
「ほんとか?」
俺の嘘に気づいたのか山地先生は再び俺に聞いてきた。
「はい」
だが俺は平然を装い真面目な表情で答えた。