【完】名のないレター

「…小学校の頃、私ある男の子に手紙をもらったの。でも、その時私風邪引いて、ぼんやりしてて誰だか覚えてなくて」

「っはあ? ってか、真奈。なんで今さらそんなこと思い出したの?」

「…分からない。でも、急に夢に出てきて思い出した」

私は杏奈の言葉で、目が覚めた。
そうだ、なんで?
今そんなことを思い出したんだ。

不思議でならない。

「…ふーん。そっか。それだけ思い出深いだね。ってか、そいつもそいつだね。真奈が具合悪い時に手紙渡すなんて」

 杏奈は、一番大好きなから揚げを少し残して、箸を置いてから私に言った。

「…私の家知っている人って、地元の人しか知らないし。だから、誰だか分からなくて」

「まぁ、地元だと真奈の家知ってる人多いかもね。でも、風邪ひいてるって分かるのは限られてくるんじゃない?」

そう言って杏奈は食べかけのから揚げを大きい口を開けて食べた。
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