【完】名のないレター
「はあ? どういうことだよ」
「…那月先輩、真奈のこと本当に分からないですね。真奈はその人の事をようやく自分で考えようとしているんです」
「……誰だよ。それ」
杏奈は俺に言った言葉にクスッと口元を緩めて笑った。
「那月先輩が一番、分かっているでしょ」
杏奈は笑いながらそう言って、自分の教室へ戻っていた。
「……」
俺が一番分かってる?
確かに、真奈の事は人一倍誰よりも分かる。
だけど、わからねぇよ。
何年も一緒にいても人の心なんて分かるはずがない。