【完】名のないレター
*
カーテンから木漏れ日が差していた。
その光を掴みとりたくなるくらいに、私は寝ぼけ顔で右手をあげた。
真奈、真奈。
私は自分の名前を呼ばれた気がした。
夢だったみたい。でも、右手はカーテンの方向へと挙げられていた。
また、夢か。
「母さん、おはよう」
「おはよう。あ、さっき那月君、来てたわよ。真奈の部屋まで行ったみたいだけど。起きなかったのね」
私は固まってしまった。
那月が私の部屋に。
「母さん、なんで那月来たの」
母さんは朝ごはんの用意をしながら、私の返答を返してくれた。
「え? なんか真奈に渡したいものあるからって。あ、これ真奈にって」