【完】名のないレター



 カーテンから木漏れ日が差していた。
 その光を掴みとりたくなるくらいに、私は寝ぼけ顔で右手をあげた。

 真奈、真奈。

 私は自分の名前を呼ばれた気がした。
 夢だったみたい。でも、右手はカーテンの方向へと挙げられていた。

 また、夢か。

「母さん、おはよう」

「おはよう。あ、さっき那月君、来てたわよ。真奈の部屋まで行ったみたいだけど。起きなかったのね」

 私は固まってしまった。

 那月が私の部屋に。

「母さん、なんで那月来たの」

 母さんは朝ごはんの用意をしながら、私の返答を返してくれた。

「え? なんか真奈に渡したいものあるからって。あ、これ真奈にって」
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