【完】名のないレター
渡されたものは、手紙だった。
その手紙は、昔もらった便箋の色と同じだった。いや、まさか。まさか。
「……まさかね。気のせいだ」
私はそう心の中で言いかけた。
だって、那月は幼馴染。
そう、幼馴染。
心の中の思いをかき消すように私は大股で学校へ向かった。
「あら、今日早いのね。いってらっしゃい」
「いってきます!」
私はいつも以上に大きい声で母さんに言った。
心の中にある思いは、それは本当に恋なのだろうか。