【完】名のないレター
「見て分かるだろ。俺が飼ってる犬のグレンだよ。真奈も見たことあるだろ。グレンは真奈に懐いてるからな。可愛いグレンのショットが取れたから。お前に渡そうと思ってな」
私さっき、茶髪の男の子を那月だと思ってたけど。…私の勘違いだったのね。
私の考えすぎだったんだ。
ただ、昔茶髪の男の子にもらった便箋と同じだったから動揺しただっけか。
「……あ、そうなの。あ、ありがとう」
私は素っ気なく笑って、那月に答えた。
「…なんか不満そうな顔だな。グレンだけじゃ不満か?」
「別に…そんなんじゃない」
私は下に俯いていたが、那月の言葉で上を向き、彼の目を一点に見つめた。