【完】名のないレター
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…俺、今日どうしたんだよ。いつもは、あんなことしないのに。
俺は叫び出しそうになりそうな声を必死になって、両手で覆った。
時が戻れる時間があったら戻りたい。
本当は真奈の家に行くつもりなんてなかった。
でも、真奈に好きな人がいると聞いたら、居ても経ってもいられなかった。
俺は起きた途端、早々と準備をして、真菜の家に無意識に向かっていたのだ。
自分の意思と関係なく、俺はインターホンを勢いよく押していたのだ。
「…あ、押しちゃった」
インターホンから聞こえる真奈の母親の声が中から聞こえてきた。