【完】名のないレター

俺は真奈の母親の声をした瞬間、我に返った。

 何をしているんだ、俺。

自分の心の中で呟きながら俺は下に俯いた。

「あら。那月君、どうしたの」

「えーと。真奈に渡すものがあって」

 真奈の母親は、俺を数秒じっと見てきて、声を発した。

「あら、そうなのね。でも、真奈まだ寝てるのよね」

 真奈の母親は、俺の言葉を待っているようかじっと見つめてきた。

「…俺、見てきましょうか」

「あら? そう! じゃあ、お願いしようかしら」

 ニヤニヤと俺の顔を見て、真奈の母親は俺に言った。

 普通、女子の部屋に本人の承諾なしで入っていいのだろうか。
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