【完】名のないレター


文字じゃなくて、直接伝えないと届かないよと言われている気がした。

 それは俊にも言われた言葉と一緒だった。

「そうだよな」

 俺は自分に自信がなかった。だけど、伝えたい思いは昔と変わらない。

「あれ? 那月! おはよう。どうした? こんな廊下のど真ん中に突っ立て」

 俊は後ろから俺に話しかけてきた。

「おーい。聞こえるか」

「…俊。俺、やっと分かったよ。真奈に言ってくる」

 俺が言った言葉に一瞬驚いた様子だったが、おうと答えて俺の背中を叩いた。

「ちゃんと、言ってこい。お前の気持ちを真奈ちゃんにぶつけてこい」
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