【完】名のないレター
私は杏奈の隣で、呆然と立ち尽くしていた。
「真奈、どうした。行くよ」
「うん」
私達は教室から出て、ゆっくりと音楽室に向かおうとした瞬間、聞き慣れた声がした。
「真奈―」
それは、高杉那月(たかすぎなつき)であった。那月は、高校三年生で私たちより一つ上であるが、私とは幼馴染である。
「那月。なんでいんの」
「失礼な。俺がいる自体、ダメみたいな言い方。俺、傷ついたぁ」
那月は私の所に来て、ちゃらけた様子で私に言った。