【完】名のないレター

「あ、そういえば。ほれ」

 那月は右手に何かを持っていた。

「あ、私が好きなサイダー」

 私は那月の傍まで行き、那月の右手に持っていたサイダーを手にしようとした瞬間。

「んっ」

 キスできるくらいの近さで那月は私の顔に近づいてきた。那月が右手で持っているサイダーは、頭上にあった。

 ち、近い。しかも、ちゃっかり私の腰に那月の左手があるし。もう、なんなのもう。

「あ、ありがとう」

私は頬を赤らませながら、那月の頭上にあったサイダーを受け取った。
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